情報科学屋さんを目指す人のメモ(FC2ブログ版)

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「言語哲学大全III 意味と様相(下)」の感想・書評・概要 このエントリーを含むはてなブックマーク

言語哲学大全 3 意味と様相 (下) 並列アルゴリズムの動作を検証する方法を学びたいというきっかけから時相論理と様相論理に興味を持ち、ひとまず様相論理に関する名著らしい「言語哲学大全 3 意味と様相 (下)」を読んでみました。感想などを書いておきます。以下、論説文モードで。

感想+書評

本書を読む以前は、「神は存在するのか」のような問題について考える学問が哲学であるとイメージしていた。しかし、それはあくまで古典的な哲学であり、現代の哲学には、はるかに広大な分野が存在することが分かった。哲学に対して同様に感じているのならば、その感じ方は本書を通じて大きく変わると思われる。

あらかじめ断っておくが、本書は様相論理や時相論理の使い方やそれを用いた証明を扱うことが目的ではないし、そもそも数理論理学に分類されさえしないだろう。本書が扱うのは現代の言語哲学である。様相論理はそもそも言語を分析するために生まれた論理であるので、まさに様相論理の源流にあたる学問である。また「現代の」とは主に1900年代後半であり、哲学に対する私のイメージからすれば驚くほど最近のことを対象とする。本書を読み進めることで、そのごくごく最近に様相論理を含めた言語哲学が大きく進歩したことが理解できたと共に、哲学に対するイメージは大きく変化することとなった。

言語哲学の大きな進歩とは、可能世界意味論の登場である。可能世界意味論は、可能性や必然性を表す言葉に意味を与える。そしてこれにより、可能性や必然性を扱う論理である様相論理は大きく発展した。そして現在、様相論理およびその応用である時相論理は、今では計算機科学分野でも応用され、システムの形式的検証に利用されている。本書では、様相論理の誕生から可能世界意味論の登場以前までにわたって、どのように扱われてきたかに触れ、様相論理の抱えていた問題を説明する。そして、可能世界意味論の登場によって、どう問題が解決されたかを詳細に述べ、これが言語哲学においていかに重要な出来事であったかを明らかにする。

また、この可能世界意味論が様相論理に限らず、様々な哲学分野で役に立つ道具であることを述べ、古典的な哲学の解釈にさえ影響を与えたことが明らかになり、この発明の影響の大きさに興奮させられた。その一方で本書では、可能世界意味論の登場により新たに生まれた問題について議論を深めていき、哲学の発展が現在へ続いていることを実感させてくれる。

書籍全体を通じて、後に否定される主張も含めた多くの主張と、それを扱った議論が紹介される。このおかげで、可能世界意味論誕生前後の哲学者たちが何を考え、そこにどのような背景が存在したかを読み取ることが出来る。これにより、表面的には難しい内容を、深いところから時間をかけて読み解くことが出来、結果、非常に得ることの大きい書籍になっている。また、その主張と反論の数々とその解説は、対象を哲学に限らない、理論の見方のようなものを示しているように感じる

"新しい理論が支持者に事欠かないのは、何が中心的な問題であり、何が周辺的な問題であるかの判断自体が変わりえたという理由によると考えられる。" (p.291)

Wikipediaには、本書が哲学(分析哲学)を専攻する日本の学生および研究者の必読書として不動の地位を占めているとされているが、必読書と呼ばれて当然と思える内容である。

概要メモ

メモを置いておきます。

4章 様相の論理学

様相論理とは、必然性と可能性(様相概念)を扱う理論である。

4.1 創造者による無視 - フレーゲとラッセル

様相概念についてはアリストテレスの時代から言及されていたが、必然性と一口に言っても様々な種類の必然性を考えることが可能であり、非常に複雑で、現代になるまで大きな進展はなかった。

現代の数理論理学/分析哲学の祖と呼ばれるフレーゲですら、様相概念を論理的であるとは認めなかった。また、ラッセルも、様相概念に関しては、著書「数学原理Principia Mathematica )」において冷ややかな態度を取った。

4.2 意味論以前の様相論理

「数学原理」に対して、1912年、C・I・ルイスは実質含意のパラドックスを指摘し、含意(「→」のこと)の代わりに厳密含意を提案した。この厳密含意は、「¬(否定)」「∧(かつ)」「◇」として表現された。この「◇」こそが可能性を表す。そして、この「◇(可能である)」を用いて、「Aでないことが不可能である(¬◇¬A)」を持ってして、「□(必然である)」を定義し、ここに必然性と可能性が再び論理学の世界に表れることとなった。

ルイスは、「◇」と「□」を加えた論理を構築しようとして、公理と、導出規則を定めて、その論理における真理全体を表現しようとしたが、様相を含む命題が真なのか偽なのかの判断が明確でなく、この試みは失敗に終わった。これは、「意味論」が欠けていたからである。(この後、以下に真偽を判定することが難しいかを例を挙げて解説している。実際、哲学者たちの間で、大きく真偽が分かれてしまった)

4.3 カルナップと様相論理の意味論

結局意味論がないまま、真偽の判断に応じていろいろな様相論理が乱立する状況が1940年代まで続いていたが、1947年、カルナップがこの状況を変え始めた。

カルナップは、「状態記述」を導入し、これが後の「可能世界」へつながっていく。状態記述とは、ある状態を限界まで詳細に表現したものと考えることが出来る。そして、あらゆる状態記述においても新であることを「L-真」とし、L-真こそが「必然的真理」であるとした。 しかし、状態記述の内部で記述同士が衝突してしまう問題に直面し、状態記述を制限する決まり(意味公準)を設定する必要に迫られ、心理の意義や存在を疑われることとなった。

4.4 クワインの様相論理批判
4.4.1 様相への関わりの三段階

クワインは、様相をどのように利用するかを3つの段階に分けた。それらは関わりの薄い順に、「閉じた分の名前に対して適用する」「閉じた文に適用して閉じた文を作る」「文一般に対して適用して文を作る」である。そして、クワインは、第一段階しか認めなかった。そして、第二段階に突入し始めたカルナップに対してクワインは、猛反対を行う。それ以来クワインは、1960年代まで延々と様相論理を批判し続ける。

4.4.2 内部量化

クワインは、内部量化という観点から批判を行った。「a=b」が成り立つとき、「aを含む文」とその文の「aをbに書き換えた文」の真偽が一致することを「代入可能性の原理」と呼ぶが、クワインは、これが成立しない場合を「指示的に不透明」と表現し、「∀や∃(量化子)」を導入した様相を含む文が、「指示的に不透明」になってしまうことを問題とした。

4.4.3 様相と記述

このクワインの批判に対し、カルナップとスマリヤンが批判を行った。特にスマリヤンは、「代入可能性原理は成り立っている」という、現在の解釈に近い反論を行った。しかし、スマリヤンの反論自体は不完全であった。ただし、物事を指し示す「記述」と「名前」を同じように扱っていることに問題があるという着目点が重要な一歩となった。そしてそこでは、純粋に対象を指示するだけの機能を持つ名前「純正指示表現」に限定して、「代入可能性原理」を議論するべきである、とされた。しかし、「純正指示表現」なるものが言語に存在するのだろうかという問題が発生してしまう。

ラッセルは、名前を「物を指すための手段に過ぎない」と考えたものの、「言語の中に見いだすことはきわめて困難である」とした。一方、フレーゲは、「どのような名前も、対象の与え方を含んでしまっている」とした。これらから、「純正指示表現」に基づく反論は難しいと考えられたが、バーカン・マーカスは、「通常の固有名こそ純正指示表現である」という大胆な主張をもって、反論を試みた。しかし、この主張は、ラッセルとフレーゲの固有名に関する理論だけでなく、今世紀前半を支配していた必然性の観念と戦う必要を伴った。しかし、この課題は1970年、クリプキの「名指しと必然性」によって果たされることになる。この8年前に、クリプキはマーカスの主張に関する討論に参加しており、マーカスを擁護している。このとき、クリプキはまだ21歳の学生であったが、すでに様相論理の世界的権威の一人と考えられていた。そしてこの後、クリプキは可能世界意味論を打ち立てることになる

5章 可能世界意味論

5.1 基本的発想

カルナップは、状態記述によって、意味論を与えようとした。しかし、クワインによる批判に対して、量化の意味論の変更を選択してしまい、大方の論理学者が認めるような意味論には至らなかった。この後、1950年代末から1960年代初めにかけて、カンガー、ヒンティッカ、クリプキの順番で統一的な意味論が構築された。この順番にも関わらず、クリプキ(当時ハイスクールに在籍)がもっとも大きな影響力を持つことになったのは、、状態記述から可能世界を構築したカルナップとは対照的に、「可能世界を【原始的な概念】とした点」が革新的だったからである。

5.2 様相明大論理のモデル論 - 到達可能性

可能世界の集合と、その間にある「到達可能」という関係、および、各世界における命題の真偽を定義することで、様相命題論理をモデル化する。ここで重要なのは、到達可能という関係の持つ「反射的」「対照的」「推移的」などの条件と、さまざまな様相論理との対応を発見したことである。

5.3 様相量化論理のモデル論 - 個体と世界

実は、様相明大論理に量化を加えたよう送料か論理には、今も現在も「標準的体系」は存在しない。

5.3.1 固定指示詞と真理値ギャップ

固有名が可能世界ごとに異なる対象を指すかどうかという選択が可能だが、固有名は可能世界に関わらず同じものを指すことを採用する。このとき、"具体的な対象"が存在する可能世界と存在しない可能世界というものを考える必要が出てくる。そして、ある対象に関する命題を、その対象が存在しない世界においてどう扱うかが問題になる。その対策の一つが、真でも偽でもない「真偽値ギャップ」という3つめの真偽値の導入である。

5.3.2 真理値ギャップの追放と存在述語

一方でクリプキは、「真理値ギャップ」を導入せずにこの問題を克服する方法を提案した。このとき、量化の導入方法がいくつか考えられ、クリプキは量化の対象をその世界に存在する者に限定する方法をとった。

6章 可能世界意味論の応用と哲学的基礎

可能世界という考え方を基礎とすることは、一度哲学の脱却した世界(形而上学)に戻ることを連想させ、拒絶されていた。しかし、それでも可能世界意味論が現在浸透しているのは、可能世界意味論の導入が豊富な応用をもたらすと分かったからである。(この章では、その具体的な応用を挙げている)

6.1 自然言語の意味論

現代の論理学は、無限の内容を有限の手段で表現できるという言語の仕組みにはじめて説明を与えることに成功したと言われる。しかし、それは「形式的言語」であり、「自然言語」には直接適用できない。フレーゲやラッセルは自然言語の欠陥を指摘し、ライルとストローソンは形式的言語は自然言語に適用し得ないと考えた。またクワインは、そもそも自然言語は論理学の目的の範囲外であると述べた。たとえば、「時制」は、形式的言語では表現できていない自然言語の特徴であるが、彼らの時制に対する考えに、「形式論理を拡張することで時制を扱う」という方針は存在しなかった。この方針に基づき、可能世界意味論によって時制を表現する時制論理が構築された。また、可能世界という考え方をより一般化した内包論理の構築により、自然言語の様々な特徴が、応用の対象となった。

6.2 哲学的概念分析への応用

可能世界意味論の出現は、哲学者に新しい道具を与え、今まで哲学の対象にすることが難しかった内容を扱うことが可能となった。たとえば、知識に関して扱う「認識論理」や、義務の概念を扱う「義務論理」などへと応用された。また、存在論や形而上学の問題を再び取り扱うきっかけとなり、可能世界意味論を通じて過去の哲学的議論が見直される原因となった。「ある条件下である性質を持つ」という性質を傾向性と呼ぶが、この傾向性を表現する「反事実的条件法 」の解釈にも、スタイルネイカーやデヴィッド・ルイスにより応用された。

6.3 可能世界とは何か

「反事実的条件法」を説明する中でのルイスは、可能世界の解釈を述べている。その中で、可能世界は、無数に存在し、その中に現実世界が存在する一方で、現実世界も、他の可能世界と異なる種類の可能世界ではないとした。この解釈は「可能主義」と呼ばれる。この解釈は多くの批判を浴びた。スタイルネイカーはこれに対し、「現実主義」を提案した。現実主義では、現実世界を唯一無比の存在とし、他の可能世界を「そうありえた仕方」と定める。

6.4 貫世界同一性

同一対象が異なる可能世界に存在するという主張は、激しい議論の対象となった。しして、異なる世界にまたがる対象間の同一性を「貫世界同一性」と呼び、これが有意味であるかどうかが争われた。この有意味性の整合性への批判は、可能世界意味論を批判する手段となった。そして、この問題は、事象様相の有意味生の問題と等しく、その有意味性は、純正指示表現が言語の中に存在するかどうかにかかっている。

7章 直接指示の理論

固有名が一定の対象を指示するのは以下にして可能かという根深い問題が存在し、フレーゲは固有名の意義とイミを区別し、ラッセルは固有名は記述に過ぎないとした。

7.1 固有名と記述 - 「標準理論」

ここで言う標準理論とは、フレーゲとラッセルの主張に基づく、固有名についての理論のことである。標準理論には、固有名が指示対象を確保するメカニズムが備わっているが、事象様相とは相容れない。

7.2 「標準理論」への批判

クリプキは、「標準理論」がいかに現実の固有名の利用とかけ離れているかを複数の観点から指摘した。

7.3 新たな標準理論に向かって

クリプキは、「標準理論」を批判したが、新理論の提出を拒否し、自らの主張を単なる(標準理論と比較して)よりよい見取り図であるとした。その結果、これを元に新たな理論が構想された。そして、この理論を「直接指示の理論」と呼ぶ。

7.3.1 指示の歴史的説明

固有名の指示が、その固有名の使用の歴史に由来するという理論を「歴史的説明による理論」と呼ぶ。一方、クリプキの言ったよりよい見取り図もこれに類似する理論を展開しており、「指示の因果説」と呼ばれる。これらの主張は、固有名が各個人がその都度意味を付与するのではなく、社会の中ですでに一定の意味と結びつけられていると見なす点が、フレーゲと大きく異なる。

7.3.2 自然種名と物質名

クリプキは、固有名でない名前、つまり一般名(自然種名と物質名)に関して考察し、必然的心理はすべてア・プリオリな真理であるという近代における常識と対立する主張を行った。しかし、クリプキの議論には不明瞭な点が多く、今後の一般名の理論の研究によって、検証されていくと考えられている。

7.3.3 指標詞

「直接指示」という用語は、カプランによって「私」「いま」などに代表される「指標詞」の意味論と関連して導入された。カプランは、モンタギューによる指標詞の取り扱いの間違いを訂正し、指標的表現を含む文の審議の決定を、指標詞の意味特性から内容を特定する段階と、内容の真偽を情況(可能世界、時点)によって決定する段階の二つに分離した。

7.3.4 「フレーゲのパズル」

カプランの直接指示の特徴付けを採用すると、フレーゲやラッセルの理論が過去に解決した問題を解く能力がないことが明らかになる。特に、その代表的な問題が「フレーゲのパズル」である。カプランもこの問題は認識しており、サーモンやウェットスタインによって、「フレーゲのパズル」に対する解法が提案されている。

終章 必然性とア・プリオリ性

可能世界意味論とは結局なんだったのか

可能世界意味論の最大の功績は、今まで考察の対象にならなかった様相的文脈や、それに類似する文脈を、活発な理論的考察の対象に引き上げたことである。また、もう一つの功績は、必然性という概念を、分析生という概念から引き離したことである。

ア・ポステオリな必然性
ア・プリオリな偶然性
浅い必然性と深い必然性

備考

この本を読むにあたって。

  • 論理(∀、∃、⇒、など)に関する知識は必要。
  • 分からないときはその都度調べる。
  • 調べても出てこないときは、諦めて先に進めばいい。常に理解しながら読み進まなくても、得られるものは大きい(私の場合)
  • 1970年代以降の言語哲学(様相論理)の歴史に関する読み物という捉え方も出来る。
  • これだけを読んで様相論理や時相論理(時制論理)が使えるようになるわけではないが、様相論理の背景を身につけられる良書(名著)だと感じた(比較してないけど)。
  • シリーズだけど、この1冊だけで問題なく読める。

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